養子がいる場合の相続税<お得になる?損をする?>相続と養子の関係【簡単解説】
養子縁組は、養親と養子との間に法律上の親子関係を作り出す制度です。
養子縁組には、
① 縁組後も実親子関係が存続する「普通養子縁組」
② 縁組により実親子関係が終了する「特別養子縁組」
の2つがあります。
ここでは、「普通養子縁組」において養子縁組をした場合に、相続税に与える影響を説明していきます。
養子縁組した場合に影響する『法定相続人』の数
『法定相続人』とは、民法により定められた被相続人の財産を相続できる人です。「被相続人の子は、相続人となる(民法第887条)」と定められているため、養子も法定相続人となります。
相続税の基礎控除の計算式は「3,000万+600万×法定相続人の数」となっているため、理論上は、養子縁組をたくさんすればするほど基礎控除が増え相続税の金額が下がっていくということになります。他にも、生命保険金の非課税限度額や、死亡退職金の非課税限度額、相続税の総額の計算においても「法定相続人の数」が影響してくるため、養子については次のように「法定相続人の数」に含める養子の数が制限されています。
『法定相続人の数』に含めることができる養子の数
- 実子がいない場合…2人まで
- 実子がいる場合…1人まで
ただし、次の場合には養子を実子として取り扱うこととされていますので注意が必要です。
- 被相続人との特別養子縁組により被相続人の養子となっている人
- 被相続人の配偶者の実の子供で被相続人の養子となっている人
- 被相続人と配偶者の結婚前に特別養子縁組によりその配偶者の養子となっていた人で、被相続人と配偶者の結婚後に被相続人の養子となった人
- 被相続人の実の子供、養子または直系卑属が既に死亡しているか、相続権を失ったため、その子供などに代わって相続人となった直系卑属
なお、養子の制限は法定相続人の数であって、法定相続人になることに制限はありません。
養子縁組した場合に影響する『法定相続分』の割合
『法定相続分』とは、相続人が取得する相続財産の民法に定められた相続割合のことをいいます。
さきほど、「法定相続人の数」については、制限があると書きましたが、「法定相続分」については民法に定められた通りとなります。法定相続分についての詳細は<過去のコラム>に記載していますのでご確認ください。
事例でみる『法定相続人の数』及び『法定相続分』
それでは、養子縁組をした場合の『法定相続人の数』及び『法定相続分』がどうなるか、事例でご紹介いたします。
- 配偶者 1名
- 実子 1名
- 養子 3名
上記の事例においては、『法定相続人の数』は実子が1人いるため、養子3人については<全員で1人>と数え『3人』となります。しかし『法定相続分』については、子の法定相続分1/2を<4人で均等に分ける>ため、1/2×1/4=『1/8』となります。
孫を養子にする場合、『相続税額の2割加算』が適用されます!!
相続税額の2割加算とは、財産を取得した人が被相続人の『一親等の血族(代襲相続で相続人となった直系卑属を含む)』及び『配偶者以外の人』である場合には、その人の相続税額にその相続税の2割に相当する金額が加算される制度です。
この制度はいわゆる「孫養子」に適用されますが、子が亡くなり、代襲して相続人となっている場合には適用されません。
養子がいると相続税の計算が複雑!
このように、養子がいる場合は相続税の計算がより複雑になってしまいます。養子が多い=相続人が多くなるので基礎控除が増えて相続税が減少すると思われがちですが、規定の制限がある上、場合によっては2割加算の適用により結果として相続税額が増加する可能性もあります。
現在養子縁組を検討されている方については、すべての規定を理解した上で行っていただく必要がございます。
京都相続遺言相談所では、知識の豊富なスタッフが様々な状況に応じた相続税シミュレーションも承っています。ぜひ一度ご相談ください。