遺言書って自分で作成できるの?遺言書の種類と作成時の注意点をわかりやすく解説します!
遺産相続は誰もが経験するライフイベントですが、遺言書があるかどうかで状況は大きく変わります。遺言書では財産の承継者を指定できるので、遺言者の思い描いた遺産相続が可能になり、相続争いも防止できます。
ただし、遺言書の作成には厳格なルールがあるため、書き方や訂正方法を間違えると相続トラブルの発生原因になるかもしれません。
今回は、遺言書の種類や作成時の注意点、専門家にサポートしてもらうメリットをわかりやすく解説します。
なぜ遺言書を作成するとよいのか
遺言書には法的な効力があり、故人の最後の遺志として尊重されるため、原則として遺言どおりの遺産相続が実現されます。
ほかにも以下のようなメリットがあるので、相続争いを回避したい方は遺言書を作成しておくとよいでしょう。
① 財産の承継者を自分で指定できる
遺言書を作成すると、以下のように財産の承継者を自分で指定できます。
- 家族が遺産分割協議を行う必要がない
- 相続手続きの開始タイミングが早くなる
- 承継者として相応しい家族に財産を渡せる
- 第三者に遺産を渡せる
遺言書がなかった場合、相続人全員で遺産分割協議を行うことになるため、各自の住所が離れていると年に数回しか集合できる機会がありません。
しかし、遺言書があると遺産分割協議が不要になるので、相続手続きの開始タイミングが早くなります。
また、「自社株を長男に相続させたい」「堅実な長女に預貯金を相続させる」など、自分で選んだ承継者に財産を渡せます。
遺言書を作成すると第三者に財産を渡せるので、相続人がいない方は寄付を検討してもよいでしょう。
② 相続トラブルの発生を回避できる
遺言書には相続トラブルの発生を回避できる効果もあります。
法的効力のある遺言書を作成した場合、相続人は原則として遺言内容に従わなければならないため、望んでいた財産をもらえなかったとしても遺産相続は決着します。
相続争いが想定されるようであれば、遺言書を作成しておくべきでしょう。
③ 遺言執行者を指定できる
遺言書では遺言執行者も指定できるので、意図したとおりの遺産相続を実現できます。
遺言執行者は遺産相続の中心的な存在となり、相続財産の管理や財産目録の作成、相続登記などの手続きに対応してくれます。
未成年者や破産者以外は誰でも遺言執行者になれるので、適任者がいるときは遺言書で指定しておきましょう。
ただし、遺言執行者には相続全般の専門知識が必要になるため、法律や税金、行政手続きなどに詳しい方を指定しなければなりません。
④ 遺言認知などの機能もある
婚姻関係にない男女間の子供を非嫡出子といい、認知された場合のみ親の相続人になれます。
認知していない子供に財産を渡したいときは、遺言書に認知する旨を記載しておきましょう。
遺言書は自分で作成できるの?
< 遺言書は自分1人でも作成できます >
専門書などに掲載されているひな形を参考にすると、遺言書に必要な要件は満たせるでしょう。
ただし、相続人や相続財産の状況によっては専門家のアドバイスが必要になり、公証役場に作成依頼した方がよいケースもあります。
遺言書の作成には前述のようなメリットもありますが、自分に向いている遺言方式や保管方法も考慮しておかなければなりません。
① 遺言書の種類
遺言書には以下の3種類があるので、特徴やメリット・デメリットを理解し、自分に合った遺言書を選ぶようにしてください。
② 自筆証書遺言
遺言者の自書によって作成する遺言書を「自筆証書遺言」といいます。
自筆証書遺言は低コストで作成できますが、以下のメリット・デメリットもよく理解しておく必要があります。
【メリット】
- 紙とペンさえあれば作成できる
- 何度でも書き直しできる
- 財産目録はパソコン作成可能
- 自筆証書遺言の保管制度を利用できる
【デメリット】
- 無効になりやすい
- 家族に発見してもらえないリスクがある
- 遺留分を侵害しやすい
- 検認前の開封は過料になる恐れがある
自筆証書遺言は作成ミスが発生しやすく、無効になるリスクが高いので注意してください。
家庭裁判所の検認前に開封すると5万円以下の過料になるため、封筒には「検認前の開封厳禁」と書いておく必要もあるでしょう。
③ 公正証書遺言
公証役場に作成依頼する遺言書を「公正証書遺言」といいます。
公正証書遺言には以下のメリット・デメリットがあり、遺言書の法的効力を担保できますが、ある程度の費用はかかります。
【メリット】
- 公証人が作成してくれるので法的効力を担保できる
- 破棄や改ざんなどのリスクがない
- 字が書けなくても遺言書を作成できる
- 公証人に出張を依頼できる
【デメリット】
- 公証人に3~5万円程度の支払いが必要
- 証人2人の立ち会いが必要(1人1万円程度の謝礼金も必要)
- 証人に遺言内容を知られてしまう
- 原案は自分で考えなくてはならない
公証人は元裁判官や弁護士などの専門家なので、遺言書が無効になるリスクはないでしょう。
ただし、原案は自分で考える必要があるため、遺産の配分によっては節税対策に失敗してしまう可能性もあります。
【参考】公証役場一覧(日本公証人連合会)
④ 秘密証書遺言
「秘密証書遺言」とは、遺言書の存在のみ公証役場が証明してくれる遺言方式です。
遺言書の内容は秘密にできますが、ある程度の作成費用がかかり、無効になるリスクが高いなど、デメリットが大きいためにほとんど利用されていません。
遺言書を作成するときは、自筆証書遺言または公正証書遺言を選択した方がよいでしょう。
自分で遺言書を作成するときの注意点
遺言書は書き方や訂正方法に厳格なルールがあるので、以下の注意点をよく理解しておかなければなりません。
① 第三者にもわかるように記載する
遺言書は相続手続きに使用するので、第三者にもわかる内容で記載してください。
たとえば、「自宅は花子に相続させる」と書いた場合、自宅は建物だけなのか、土地・建物の両方を指しているのかわからず、相続人も特定できません。
身内だけにわかる書き方では相続手続きに使用できないため、以下のように記載する必要があります。
- 相続人:遺言者の妻である清水花子(昭和○○年○月○日生)と記載
- 建物:所在や家屋番号、構造や床面積などを記載
- 土地:所在や地番、地目や地積(土地面積)を記載
預貯金口座や株式の記載方法も間違えやすいので、必ず個別特定の財産であることがわかるように記載しておきましょう。
② 自筆証書遺言は無効になるリスクが高い
自筆証書遺言は相続人や相続財産の書き方に注意しなければなりませんが、訂正方法を間違った場合も無効になるリスクがあります。
一般的なビジネス文書は訂正箇所に二重線を引き、その上から訂正印を押印しますが、遺言書の場合は訂正内容がわかるように訂正印をずらします。
また、余白部にも「5行目の○○を△△に訂正した。清水太郎」と記載し、遺言者本人による訂正がわかるようにしておかなければなりません。
訂正方法が不十分だった場合、相続人が無効を主張するケースがあるので注意してください。
③ 保管方法を工夫しておく
自筆証書遺言を作成するときは保管方法を工夫する必要があります。
見つけやすい場所に保管すると偽造や変造の恐れがあり、厳重な保管方法では発見してもらえないリスクもあるため、以下のように対処しておくとよいでしょう。
- 自筆証書遺言の保管制度を利用する:遺言書を法務局で保管
- 公正証書遺言を作成する:遺言書の原本が公証役場に保管される
- 税理士や司法書士などの専門家に預かってもらう
なお、自筆証書遺言の保管制度を利用すると、指定した人に遺言書の存在が通知されるようになっていますが、法務局が遺言者の死亡を知った場合に限られます。
偽造や変造、発見されないリスクを回避したいときは、公正証書遺言の作成、または専門家に預かってもらう方法が理想的です。
遺言書の作成を専門家にサポートしてもらうとよいケース
以下のような相続財産があるとトラブルが起きやすく、相続税も高額になってしまうため、遺言書の作成を専門家にサポートしてもらうとよいでしょう。
① 公平な遺産分割が難しい場合
主な相続財産が不動産などに偏っており、公平な遺産分割が難しいときは専門家に相談してください。
相続発生までに十分な期間があるときは、特別受益に該当しない生前贈与、または相続財産に加算する必要がない生前贈与を提案してくれます。
生命保険の活用も取得財産のアンバランスを解消できるので、契約形態の選び方や受取人の指定を相談しておくとよいでしょう。
② 評価の難しい財産がある場合
土地や非上場株式など、評価の難しい財産があるときは税理士に遺言書作成をサポートしてもらいましょう。
土地の相続税評価額は路線価方式や評価倍率方式を使いますが、どちらも形状や接道条件に応じた補正が複雑になっています。
また、周辺環境の変化により、購入時の1.5倍や2倍に地価が上がっている例も少なくないため、評価を間違えると遺産の配分に大きな偏りが生じるでしょう。
非上場株式は評価方法が数種類あるので、発行会社の規模や決算状況から適正な評価方式を選択しなければなりません。
親族に事業承継する場合、持株比率を高めることで後継者の支配権を確保できますが、経営に関わっていない親族への遺産配分が少なくなってしまうケースもあります。
ただし、適正な評価額がわかれば生前対策も打てるので、遺言書で土地や非上場株式の承継者を指定するときは、早めに税理士へ相談しておくとよいでしょう。
③ 相続税対策が必要な場合
遺産総額が高額になるときは、相続税対策を済ませた後に遺言書を作成してください。
相続税対策をしないまま遺言書を作成すると、相続人の税負担が重くなり、納税資金を確保するために財産を売却しなければならないケースがあります。
相続税対策には暦年贈与の活用、または生前贈与の非課税特例などがあり、土地オーナーの場合は収益物件の建築による評価減を適用できます。
養子縁組や生命保険の活用も相続税対策になるので、税理士に最適なプランを提案してもらうとよいでしょう。
遺言書の作成に迷っている方は、『京都相続・遺言相談所』にご相談ください
遺言書の書き方は専門書やネット上のひな形を参考にできますが、相続財産の内容や相続人の人数、遺言者や各相続人の考え方はすべて異なります。
すべての遺言書は自分だけのオリジナルになるため、誰にどの財産を承継させるか迷ったときは、ぜひ新経営サービス清水税理士法人 京都相続・遺言相談所にご相談ください。京都相続・遺言相談所では、争いの起きない遺言書の作成や、節税効果の高い相続税対策などをサポートしています。遺言作成についてお悩みがありましたら、まずはご相談ください。