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公開日: 2023.12.10

令和5年度税制改正の対象となった相続税・贈与税の制度を解説!

令和5年度税制改正の対象となった相続税・贈与税の制度を解説!

令和5年3月末に、令和5年度税制改正に関する法案が成立しました。令和5年度の税制改正では相続税・贈与税に大きな変更がありましたので、本記事では税制改正の対象となった制度および、改正事項について解説します。

令和5年度税制改正による主な贈与税・贈与税の変更点

相続税・贈与税で令和5年度税制改正の対象となった主な制度は、次の4つです。

  • 相続税の贈与加算
  • 相続時精算課税制度
  • 教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度
  • 結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度

上記の制度のうち、贈与加算および相続時精算課税制度は特に大きな改正がなされていて、贈与する時期や相続が発生したタイミングによっては、課税対象となる額が変わってきます。

相続税の贈与加算の税制改正による変更点

令和5年度の税制改正により、相続税の贈与加算の対象期間が変更になります。

■制度の概要

相続税の贈与加算は、相続・遺贈・相続時精算課税で財産を取得した人が、被相続人から相続開始前3年以内に暦年課税に係る贈与によって取得した財産がある場合、その贈与財産の価額を相続税の計算に加算する制度です。

贈与税には110万円の基礎控除額があり、年間の贈与金額が基礎控除額以内であれば、贈与税は発生しません。しかし、贈与者が亡くなった日から遡って3年前の日から死亡日までの間に受けた贈与財産は、110万円以下であったとしても相続税の計算に含める必要があります。

贈与加算の対象になった贈与財産を取得した際に納めた贈与税額については、加算された人の相続税から控除することができます。ただし、控除額は相続税額が上限ですので、贈与税額が相続税額を超えたとしても、差額税額が還付されることはありません。

令和5年税制改正_相続時精算課税制度について

■令和5年度税制改正のポイント

令和5年税制改正_相続税の贈与加算_変更点とは

令和5年度の税制改正で、相続税の贈与加算の対象期間が相続開始前3年から7年に延長されます。

新たに加算対象期間となった相続開始前3年超から7年までの期間中に、被相続人から贈与財産を取得した場合には、100万円控除が適用されます。

たとえば被相続人から相続人が相続開始前5年に60万円、相続開始前1年前に80万円の贈与を受けた場合、60万円は100万円以内なので全額控除され、80万円は100万円控除の対象期間外なのでそのまま贈与加算の対象となります。

贈与加算の改正は、令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税からの適用なので、令和5年までの贈与加算の対象期間は相続開始前3年です。

令和5年税制改正_相続税の贈与加算_シミュレーション

■税制改正による相続税・贈与税への影響

贈与加算の対象期間が4年拡大しますので、令和5年度の税制改正は実質的な増税です。

相続税対策として用いられていた贈与税の基礎控除額110万円を利用しての生前贈与については、相続が開始する7年前までに実施していないと節税効果が得られなくなりました。

そのため税制改正後は贈与税の基礎控除額だけでなく、贈与税の非課税特例や相続税の特例制度を活用して相続税対策を行うことが重要になります。

相続時精算課税制度の税制改正による変更点

相続時精算課税制度は、高額の財産を生前中に移動させる際に活用されてきましたが、令和5年度税制改正で、節税目的による利用も可能になります。

■制度の概要

相続時精算課税制度は、原則として60歳以上の父母または祖父母など(特定贈与者)から、18歳以上の子または孫(受贈者)などに対し、財産を贈与した際に適用できる特例制度です。

一般的な贈与は暦年課税の対象ですが、相続時精算課税を選択した場合には、特定贈与者からの贈与は特別控除の適用により、最大2,500万円まで非課税で贈与することが可能です。

2,500万円の特別控除額は生涯での控除額なので、贈与財産の価額を差し引いた特別控除額の残額は翌年以後に繰り越すことになり、特定贈与者からの贈与金額の合計額が2,500万円を超えた場合は、超えた部分に対して一律20%の税率を乗じた額を贈与税として納めます。

特定贈与者が亡くなった際、相続時精算課税制度により取得した贈与財産の価額については、相続税の計算に加算しなければなりません。

相続財産と相続時精算課税による贈与財産の価額の合計が相続税の基礎控除額を超える場合、贈与財産の価額に対する税金を相続税として納めることになります。

相続時精算課税を適用して納めた贈与税は相続税から差し引くことができ、贈与税額が相続税額よりも多かったときは、相続税の申告をすることで差額税額が還付されます。

令和5年税制改正_相続時精算課税制度について

■令和5年度税制改正のポイント

令和5年度税制改正の相続時精算課税制度の改正点は2つあります。

1点目は、110万円控除の新設です。

相続時精算課税の控除は、2,500万円の特別控除額しか存在しませんでしたが、暦年課税の基礎控除とは別に110万円の控除を適用できるようになります。

特定贈与者の相続が発生した際に加算する額は、110万円を差し引いた後の額なので、少額の贈与であれば相続税への加算が不要です。

本改正は、令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税または贈与税について適用されます。

令和5年税制改正_相続時精算課税制度_変更点とは

2点目は、災害等が発生した際の相続税への加算額の見直しです。

相続時精算課税適用者が特定贈与者から不動産の贈与を受けた場合、贈与日から特定贈与者の相続税の申告書の提出期限までの間に災害によって一定の被害を受けたときは、評価額の減額措置が適用されることとなりました。

相続税に加算する額は、贈与時点における贈与財産の価額から災害によって被害を受けた部分に相当する額を控除した残額です。

本改正は、令和6年1月1日以後に生ずる災害により被害を受ける場合から適用されますので、改正前に相続時精算課税制度で贈与を受けた財産も対象です。

令和5年税制改正_相続時精算課税に係る土地又は建物の価額の特例の創設_変更点とは

■税制改正による相続税・贈与税への影響

従来の相続時精算課税制度は、贈与財産の価額がそのまま相続税に計算に加算されるため、節税効果は乏しかったです。しかし、令和6年以降は110万円までの贈与は課税されないことになりましたので、節税目的で相続時精算課税制度を利用する選択肢も出てきました。

また税制改正前までは、災害等を受けて贈与不動産の価値が著しく下がったとしても、相続が発生した際に加算する価額は贈与時点の価額でしたが、被害を受けた状況に応じて減額補正が適用されますので生前贈与によるデメリットも軽減されます。

相続時精算課税制度を適用する場合には贈与税の申告が必要であり、申告以後の特定贈与者からの贈与は、すべて相続時精算課税により計算することになります。

暦年課税であれば110万円以内の贈与なら申告不要でしたが、相続時精算課税を選択した場合には、贈与金額の大小に関係なく申告が必要になる点には注意してください。

贈与税の教育資金非課税制度の税制改正による変更点

「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度」は、期間限定の特例制度でしたが、税制改正により適用期間が延長されます。

■制度の概要

教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度は、30歳未満の受贈者が教育資金に充てるために父母や祖父母などの直系尊属から贈与を受けた場合、最大1,500万円まで非課税になる特例です。

通常の贈与税とは異なり、教育資金非課税申告書は取扱金融機関の営業所等を経由して提出しなければなりません。

また、特例を適用したとしても、贈与を受けた金額を教育以外の目的で使用した部分については、贈与税の課税対象となります。

■令和5年度税制改正のポイント

令和5年度の税制改正により、教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度の適用期間は、令和8年3月31日まで3年延長されました。

また適用期間延長に伴い、次の措置が講じられます。

<税制改正による変更事項>

信託等があった日から教育資金管理契約の終了の日までの間に贈与者が死亡した場合において、贈与者の死亡に係る相続税の課税価格の合計額が5億円を超えるときは、受贈者が23歳未満である場合等であっても、死亡日における非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残額を、当該受贈者が当該贈与者から相続等により取得したものとみなす。
受贈者が30歳に達した場合等において、非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残額に贈与税が課されるときは、一般税率を適用することとする。
本措置の対象となる教育資金の範囲に、都道府県知事等から国家戦略特別区域内に所在する場合における、外国の保育士資格を有する者の人員配置基準等の一定の基準を満たす旨の証明書の交付を受けた、認可外保育施設に支払われる保育料等を加える。
  1. ①の改正は、令和5年4月1日以後に取得する信託受益権等に係る相続税から適用されます。
  2. ②の改正は、令和5年4月1日以後に取得する信託受益権等に係る贈与税から適用されます。
  3. ③の改正は、令和5年4月1日以後に支払われる教育資金から適用されます。

贈与税の結婚・子育て資金非課税制度の税制改正による変更点

「結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度」の適用対象期間は、平成27年4月1日から令和5年3月31日でしたが、税制改正で適用期間が延長されます。

■制度の概要

結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度は、18歳以上50歳未満の方が、結婚・子育て資金に充てるために父母や祖父母などの直系尊属から贈与を受けた場合に適用できる特例です。

最大1,000万円まで結婚・子育て資金が非課税になる制度ですが、教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度と同様、制度を利用する際は結婚・子育て資金非課税申告書を取扱金融機関の営業所等を経由して提出する必要があります。

また、結婚・子育て以外の目的で資金を利用した部分の金額は、贈与税の課税対象となるのでご注意ください。

■令和5年度税制改正のポイント

令和5年税制改正_結婚子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度の期間延長_変更点とは

結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度の適用期間は、令和7年3月31日まで2年間延長となります。

適用期間の延長に伴い、受贈者が50歳に達した場合等において非課税拠出額から結婚・子育て資金支出額を控除した残額に課される贈与税の税率は、一般税率が適用されます。

贈与税には一般税率と特例税率の2種類あり、父母・祖父母からの贈与については基本的に特例税率の対象となりますが、今回の税制改正で結婚・子育て資金の残額に対する贈与税は、一般税率で計算することとなります。

本改正は、令和5年4月1日以後に取得する信託受益権等に係る贈与税から適用されます。

まとめ

令和5年度税制改正の中でも、贈与加算の対象期間延長と相続時精算課税制度の110万円控除の新設は大きな改正事項です。

贈与加算の範囲は拡大しましたが、相続時精算課税制度を活用しての節税ができるようになった点は、納税者にとってメリットのある変更です。

財産状況や家族構成などによって、最適な節税方法は違いますので、本格的に税金対策を行う際は、事前に専門家に相談することをオススメします。


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